羽柴弁護士の愛はいろいろと重すぎるので返品したい。【番外編 2021.5.9 UP】

 一回って言ったのに! 先輩の嘘吐き!
 やっぱり、私は先輩なんて嫌いだ。今、それがはっきりわかった!


 唇の端から飲み切れなくなった唾液が伝って、それも先輩は舐めとると、私を抱きしめ、私の頭を優しく撫でる。先ほどのキスの激しさとは違う、その柔らかな温かさに、なんだかまた泣きそうになる。

「先輩、これ以上は、もうだめ……。もうわかった。私、もう先輩とこういうこと、したくない。先輩のこと嫌い、大嫌い!」
「うん」

 先輩は私と額を合わせるとクスリと楽しそうに笑って、

「でも、みゆ?」
と私の頬を優しく撫でる。「さっきから俺の服をずっと掴んだままだよ?」


 え、そんなわけない、と思って自分の手の先を見ると、私の手は、先輩のスーツの背中部分を強く、強く、握りしめていた。


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