まだ、青く。
「夏目」


過呼吸になりかけた私に凪くんは木綿よりも柔らかくて優しい言葉を紡いだ。

私はその声に導かれるように顔を上げた。


「月が...きれいだ」


私は残っていた全ての力で首を縦に振った。


それからのことは良く覚えていない。

なんとなく、安心する香りが近くにあって

ここではないどこかへ向かっているような

そんな気がしていた。


< 233 / 310 >

この作品をシェア

pagetop