まだ、青く。
――コンコンコン。


窓ガラスが音を立てた。

私はびっくりして一瞬宙に浮いたけど、その先にいたのが警察じゃなくて凪くんだったから、ほっと胸を撫で下ろした。

そして、窓も下げた。


「バスのチケット取れたから、5時20分発ので行くよ」

「えっ?5時?」


腕時計を忘れたためスマホで確認したけど、やはり何度見ても今は4時55分だった。


「俺も行くから」

「で、でも...」

「昔は東京に住んでたから電車の乗り方は一応分かる。頼りにならないかもしれないけど、1人よりは幾分マシかと思う。だから...俺も一緒に行っていいか?」


マシというレベルではない。

心の底から安心する。

凪くんが居てくれれば何だって出来る気がする。

こんな私でも見たことのない世界に飛び込める気がする。


私はドアノブに手をかけた。

この先に広がる世界がどんな世界でも私は受け止めたい。

そう、強く思った。


「汀次さん、ここまで運転ありがとうございました」

「おう。気をつけて行ってきな」

「...はい」


私はドアを開けた。

まだ見ぬ世界へのチケットを私は手にし、踏み出す勇気が胸の底から沸々と湧いて来ていた。

探そう。

捜そう。

見つけたい。

見つけよう。

私の知らない世界で、

私の知らない真実と、

私の知らない感情を。


私は大きく深呼吸をし、海の香りを感じてから、凪くんと共にバスに乗り込んだのだった。
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