狙われてますっ!
 今、渡真利の車で通っている道は、毎朝、おにぎりを握っては、遅刻ギリギリで走っていた道だった。

 そんな自分のささやかな日常の残像を追うように、住宅街の古いアスファルトの道を見ながら汐音は言った。

「……楽しかったんです」

 ん? と渡真利がこちらを見る。

「なんだか普通のOLさんになったみたいで」

「じゃあ、警察やめて、普通に会社員になればいいじゃないか」
と渡真利は素っ気なく言う。

 未練がましい物言いをする自分に、嫌味で言ったのかなと思ったが違った。

「そしたら、今回みたいに狙われることも……

 いや、お前は何処に居ても、自分で騒動を呼び込んできそうだが」

 今回だって、危険な目に遭うはずもなかったのに、と渡真利は渋い顔をしていた。

 どうやら、心配して言ってくれているようだった。

 渡真利さんのときのおにいちゃんも、なんだかんだでやさしいよな、
と思ったとき、渡真利がアパートの駐車場の端で車をとめた。
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