竜王陛下のもふもふお世話係２～陛下の寵愛はとどまるところを知りません～
「屋根なしの馬車なのですね」

　てっきり箱馬車だと思っていたミレイナは意外に思った。
　マリベルの乗っていたのは、二頭立ての二人乗り無蓋馬車だった。赤いシートはベロアで覆われており、車体の側面にはところどころに金箔が施された飾りの付いた豪華なものだ。

「ええ。今日は天気もいいから、風があると気持ちがいいと思って」
「そうですね」

　ミレイナがマリベルの隣に座ると、馬車が動き出す。

（風は気持ちいいけど、意外と揺れるわ）

　ミレイナは持っていた鞄を落とさないようにしっかりと両手に抱える。

「マリベル様は今日も素敵ですね」

　ミレイナは隣に座るマリベルに話しかける。

　遠目に見るとただの黄色に見えたワンピースは、近くで見ると全体に白い糸で刺繍が施されていた。裾からはレース飾りが覗いており、とても上品なものだ。
　上半分が美しく結い上げられた髪には金細工の髪飾りが付いていた。その金細工に、沢山の宝石がちりばめられている。

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