蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


 テナントには日本の古き良き文化を伝えるための高級な和のお店が並んでいました。
 そこでショッピングを楽しんでいらっしゃるのは、すぐに見てわかるほどのセレブな方たちばかり。
 それなのに私は……

「ふあっ!柚瑠木(ゆるぎ)さん、あのお店は何のお店でしょう?あ、そっちのお店は……」

「月菜さん、ちゃんと前を見て歩かないと転んでしまいます。」

 私はいままであまりこうしてお買い物に来る機会が無かったので、あっちの店もこっちの店も気になってしまって。
 子供のようにはしゃいでしまい、柚瑠木さんに迷惑をかけてしまいました。

月菜(つきな)さん、そこのお店に入りませんか?」

 シュンと一人で反省していると、柚瑠木さんが目の前にある和食器のお店を指さしました。嬉しいです、私そういうのを見るの大好きなんです。

 中に入ると色んな和食器が並んでいて……人気のブランドの物もありましたし、職人さんの手によって作られた一点物まで。
 さすが【ベリーヒルズビレッジ】のテナン内にあるお店だと思いました。

 その中で私が気になったのが、お箸でした。それはとてもシンプルな物でしたが、どうしても欲しくて私は柚瑠木さんに買ってもいいかを尋ねました。

「お箸ですか?すでに家には用意されていると思いますけど……どれですか?」

 私は柚瑠木さんに、欲しいと思ったお箸を見せる。もしかしたら嫌がられるかもしれない、だけど私はこれを柚瑠木さんとお揃いで使いたくて……

「この、夫婦箸が欲しいんです。」


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