蜜溺愛婚 ~冷徹御曹司は努力家妻を溺愛せずにはいられない~


柚瑠木(ゆるぎ)君もちゃんと前に進んでるのよね。だったら、私も……」

「ええ、僕たちはそろそろ失礼します。少しでも早く月菜(つきな)さんと二人きりになりたいので。それに……真澄(ますみ)さんも、もう行きますよね?」

 繋いだ手を真澄さんに見せつけるように前に出す柚瑠木さん。そんな彼の行動と言葉で、ますます私の胸は高鳴ってしまうんです。
 私たち二人の様子を見ていた真澄さんは、苦笑いを浮かべながら廊下へと続く扉を開けて……

「ええ。私もずっと待っているだけじゃなくて、自分から会いに行ってみるわ。こうして、柚瑠木君たちに会えてよかった。だけど、《《今日は》》もう帰ってね?」

 そう言ってスッキリとした笑顔を見せてくれました。「今日は」という事は、真澄さんとはこれから先また会うことが出来るはず。
 私と柚瑠木さんは見つめ合い小さく頷くと、ソファーから立ち上がり真澄さんに頭を下げました。
 真澄さんの部屋を出てマンションのエントランスを通り過ぎ、車に着くまで繋がれたままだった私たちの手。柚瑠木さんはその手を満足そうに見つめて……

「ありがとうございます、月菜さん。貴女がいてくれたから僕は頑張れました」

 私は小さく「はい」とだけ答えて、その繋がれた手に頬を寄せました。私も柚瑠木さんがいてくれるから頑張れるのですよ、という言葉を心の中で呟いて。

「では、帰りましょうか」

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