絶対様
そして、昨日の出来事を思い出す。


今でも悪い夢だったんじゃないかと思う。


だけどあれは紛れもない事実で、あたしの目の前で起こったことだったんだ。


あたしはスマホを取り出して画面を確認した。


昨日の朝美緒に送ったメッセージは既読がついていないままだ。


あたしは灰色に濁った美緒の目を思い出していた。


心臓が完全に停止した後、たしかに美緒は目を開けた。


なにも言わず、なんの反応も見せない、空っぽの美緒。


廃墟から出るとき、咲は美緒の拘束を解いていた。


それでも美緒は椅子から立ち上がろうとせず、ずっとそこに座っていたのだ。


一瞬美緒にメッセージを送ろうかと考えた。


今度はなにかしら反応があるかもしれないし、無事に家に帰ることができたかどうかも木になった。


しかし、あたしの指はなかなか動いてくれなかった。


大丈夫?


と、たったそれだけでもいいと思うのに、美緒へのメッセージを入力することができない。


脳裏には灰色の目をした美緒がいて、自分がそれに怯えているのだということに気がついた。


心臓は止まっていた。


目が開くはずがない。
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