綾取る僕ら
綾香と付き合うことになった。

ああ、気を抜くとすぐに口元が緩む。

俺たちは昨晩、そのまま最後までヤッてしまった。
デレデレの原因はそれだった。

二人で綾香の家を出て大学に向かう。
一度俺ん家に寄っていくのにも綾香はついてきた。

今まで何度も一緒に歩いた道なのに、今日は地に足がついてないくらいフワフワする。

「悠人って今まで付き合ったことあんの」

綾香が好奇に満ちた目をして聞いてきた。

「知ってどうすんの」
「私が初めてなのかなあと思って」

俺は綾香が初めてではなかった。
中3の時にも付き合ってた子はいたし、高1の時に女子バスケ部の女の先輩と付き合って初体験を済ませてる。

これをそのまま言っていいのか、それとも、と軽く悩んで面倒くさくなった。

「付き合ってた子いたよ」

そう言うと、綾香は「え」と言って固まった。

「すごい意外なんだけど。いつ?いつ?」
「結構前だけど。高1ん時とか中3とか」

綾香が俺の目を覗き込んでくる。
どんな反応なの、これ。

「じゃあさ、キスとか全然初めてじゃないの?」

そんな綾香の問いに俺は黙って頷いた。

「だって、綾香もでしょ」
「まあね」
「だから別に良くない?」

俺がそう言うと、「へーそうなんだー」と独り言をこぼす。

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