綾取る僕ら
朝II
悠人は私が初めての相手じゃなかった。
その事実がスンと腑に落ちる。

やっぱり。そりゃそうだ。

ずっと私の中で悠人は「女なんて知りません」って顔をしてたけど、こんなにスムーズに物事を進められたのは経験者だからこそなせるワザだったんだと思う。

「俺下手だった?」

悠人が不安そうな視線を向ける。

「え?いや?べつに?そういうんじゃないよ」

私の初めての人は高3の時の彼氏で、向こうも私が初めてで、あまりの慣れなさに冷めてしまったことがある。
好きな人の慌てふためく余裕のない姿。
布団の上で置いてけぼりにされるような、あの感覚。
この人、今自分のことでいっぱいいっぱいなんだ、と思った途端にスッと恋心が消えてしまった。

だから少し、昨日も同じように冷めてしまうのかなと不安になったけど、予想は外れて最後まで淡々と事を進める悠人の姿に私は心を射抜かれてしまった。

そんなくだらないこと、言えない。

馬鹿じゃないのって鼻で笑われそう。

悠人のことを好きになるなんて思ってもいなかった。

ああ、今日は一段と悠人がカッコよく見える。
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