綾取る僕ら
一発で言い当てられたけど、「違います」と答える。

「なんで綾香ん家から出てきたんですか」
「タクシー代払った代わりに泊めてもらったっていうか」

クルーンクルーンと華麗に仁さんの親指の上で回される俺のボールペン。

そんなことって・・・

そんな簡単に異性の部屋に泊まることってあるかな。

「そんな・・・」
「大丈夫だよ、俺、大丈夫」

仁さんは根拠のない「大丈夫」を繰り返してきた。

「何が大丈夫なんですか」

教授が入ってきた。
ただ長々と黒板を書き写すだけの退屈な授業が始まる。
説明は一切耳に入ってこない。

「俺、綾香のことは妹くらいにしか思ってないから」

そう言って笑う。
俺は無意識に仁さんを睨み返す。

「だってお前、狙ってんでしょ?」

この人は的確に的を得てくる。

「ノートくらい取ったらいいんじゃないすか」

俺は話を紛らわせた。
仁さんは「似合ってると思うけどな」と呟きながら渋々ノートを取り始める。

じゃあ、なんで平然と同じ部屋に泊まったりするんですか。

俺の気を知ってて。

俺もノートを取り始めた。
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