イジメ返し―連鎖する復讐―
中学時代は阿吽の呼吸で練習を続けた。

誰一人として時間より前に「もうやめよう」と言ったことはなかったし、一分一秒無駄にすることなく練習に打ち込んだ。

だから、県大会に出場できたのだ。

努力は絶対に無駄にはならないとあたしは中学生で知った。

だから、今、この瞬間も努力を続けたい。

頑張れば頑張っただけ、結果は必ずついてくる。

「部長はあたしだから。全ての権限はあたしにあんの。今日はこれでおわり。1、2年は片付け。はい、解散!」

ノエルの言葉に後輩たちが散っていく。

「ノエル、待ってよ!」

クルリとあたしに背中を向けたノエルの腕を掴む。

「は?なんなの?」

ノエルは思いっきりあたしの手を振り払った。

「もっとちゃんと練習しようよ。部長がやる気なかったら後輩たちに示しがつかないよ」

「あのね、あたしは別にやる気がないわけじゃないから。むしろ、アンタのやり方じゃ後輩が潰れる」

「え?」

「オーバーワークすぎ。つーか、部長はあたし!アンタにとやかく言われる筋合いない」

「ノエル……!」

「うっぜぇな!!ついてくんなよ!!」

ノエルは吐き捨てるように言うとあたしを睨み付けて体育館を出て行った。

「ハァ……」

どうしてノエルは分かってくれないんだろう。

深いため息をついたとき、後ろでコソコソ話す声が聞こえた。

「今のは咲綾が悪いよね」

「咲綾ってマジで暑苦しくない?」

誰の声かは分からなかった。

3年部員である海荷、美香、真子の3人がノエルを追いかけるように体育館を出て行く。

これが決定打になったのか、それとももっと前から壊れていたのか。

あたし達の関係はこの日を境に変わった。

ーーこれが地獄のはじまりだった。
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