イジメ返し―連鎖する復讐―
ここ数日、とにかく忙しかった。

全ては長島海荷のせいだ。バスケ部の連中の写真を隠し撮りしてSNSにアップしたせいで問題は学校中に広がった。

顧問としての監督責任を校長から指摘され叱責されてただでさえ精神的に疲弊していたところで海荷の自殺未遂が拍車をかけた。

高校生が自宅から身を投げたことを重く見て、警察にも話を聞かれる毎日。

海荷の両親はバスケ部内でのイジメがあったのかもしれないなどと話し、海荷が飛び降りることになった経緯を説明するように求めてきた。

『先生はうちの子の異変に気付かなかったんですか!?』

母親に怒鳴り散らされ、悪いのはお前の娘だろう!という言葉が喉元まで出かかった。

そもそも海荷がノエルや瑠偉の下着姿をSNSにアップなどしなければこんなことにはなっていないのだ。

あの両親は自分の娘がしでかしたことを認めず、責任転嫁をしている。

とんでもないモンペだ。

「ハァ……」

広い浴槽に体を沈めると、疲れが一気に取れていく。

海荷の問題はようやく今日片付いた。

他人の下着姿の写真をモザイクをつけたとはいえSNSで晒した罪は重く、海荷は今日付けをもって退学処分となった。

もちろんそれは建前で本音は厄介払いにすぎない。

学校側は海荷を退学にすることで全てをうやむやにしようとしたのだ。

SNSで一度画像が拡散されてしまえば、投稿を削除したところで意味をなさない。

画像は永遠にネットの世界で消えることなく残り続ける。

我々教師がどんなに火消しに動いたところでその画像は増殖を続ける。

海荷のSNSにはその後、何者かが報復するかのように卒アルの画像や海荷の個人情報をさらした。

そして彼女はそれを苦に身を投げた……。

「やれやれ。とんでもないことに巻き込まれて災難だったな」

ふぅとため息をつき、首を回す。

海荷のことはもうどうだっていい。退学になった彼女に二度と会うことはないだろう。
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