イジメ返し―連鎖する復讐―
酷い疲労感を感じる。

ずっと同じ姿勢で身動きが取れないせいかそれとも先程の衝撃的な動画を見せられたせいだろうか。

「愛しの祐ちゃんが姉とあんなことしてたなんてビックリだったでしょ?でもね、驚くのはまだ早いよ」

クックッと楽しそうに喉を鳴らして笑う咲綾を睨み付ける気力はもはや残されていなかった。

今度は一体何……?

しばらくすると、マリアが手を振り画面から祐ちゃんが消えた。

家に帰ったんだろうか。

そのとき、マリアのスマホが鳴った。

「もしもし~?りほ~?また合コンの誘い?」

友達からの電話なのか笑顔で会話をしている。

「今日の21時からね。オッケー。ハイスぺな男くる?いい男いたらあたし今日持ち帰るからよろしく」

家では穏やかで優しい口調のマリアとはまるで別人のような話口調に驚く。

「えっ、彼氏にバレないのかって?へーきへーき!ソウタ、今日は夜勤だから。うん、そうそう。まだ研修医だけどね~」

顔の筋肉が痙攣する。ソウタって誰……?

マリアは祐ちゃんと付き合ってるんじゃないの……?

だからさっきだって二人は愛し合って――。

「男と遊びすぎ?りほだって同じじゃん!まあでも、今日も隣の家の妹の好きな男と寝たし遊びすぎかもね」

その言葉に目を見開く。

妹の好きな男……?

祐ちゃんのことをマリアに話したことはなかった……。

マリアはあたしが祐ちゃんを好きなことを知っていて手を出したの?

「あはっ、最低とかひど~!ただの遊びじゃん。でも、ノエルが知ったらどんな反応するかちょっと楽しみかも。もうちょっとしたらバラそうかな」

……嘘……。どうしてそんな酷いことを言うの……?

今までずっとあたしの味方だったのに。優しかったのに。

あたしにとってマリアは理想の姉だったのに。
 
「あぁ、プレゼントのこと?あれ、あたしが買ったものじゃないし。一方的に好意持ってプレゼントくれるキモい男がいるんだよね。そんなの使うの絶対無理だし。で、捨てんのめんどくさいからゴミを妹にあげてるだけ」

あははははと笑うマリアの声に胃の奥から何かがこみ上げてくる。

「あははは、確かにひどいかも。でも、妹っていっても父親違うし。昔から嫌いだったんだよね。パパも嫌ってるし。あたしみたいになろうって頑張ってるけど無駄な努力なのにねぇ」

その言葉に胃液が喉元までせり上がってきて、あたしはその場で激しくおう吐した。

「ゴホッ……ゴホッ……」

鼻に逆流した吐しゃ物で鼻の奥がツンっと痛んで目に涙が浮かぶ。

……マリアは……あたしと父親が違うことを知ってたの……?

「まあ、高校卒業後にこの家を追い出されるのは間違いないしそれまでは出来るだけやさしくしてあげようかなって。ほらっ、あたしいいお姉ちゃんだしさっ?」

ノエルと友人との電話の動画はそこで切れていた。

「なんで……」

放心状態で目をつぶる。
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