イジメ返し―連鎖する復讐―
「正直、イジメは部活の中だけの話だから。クラスにはしゃべる子もいるし、部活を引退しちゃえばイジメられることもないと思う。バスケを出来なくなるのは残念だけど、あと少し我慢をすれば……」

「悪いのはイジメっ子です。咲綾先輩が我慢する必要なんてないんです」

「だけど……」

「先輩、イジメ返しって知ってますか?」

「聞いたことはあるけど……。それがどうしたの?」

「エマが協力します。イジメ返し、しませんか?」

「そ、そんなの無理だよ。うまくいきっこない」

「一人じゃ出来ない事でも、二人ならできるかもしれませんよ」

「無理だよ。もしそんなこと考えてることがバレたら……。もう学校にだって通えなくなっちゃう。今以上に状況が悪くなるかもしれない。そんな一か八かの賭けみたいなことあたしにはできない」

フルフルと首を振ると、エマがやわらかい笑みを浮かべた。

「考えておいてください。エマはいつだって咲綾先輩の味方ですから」

「……うん。ありがとう」

「じゃあ、そろそろ帰りましょうか?」

そう言うと、エマが立ち上がりスマートフォンを耳に当てた。

「はい。校門の前につけてください。よろしくお願いします」

どこかへ電話をかけていた様子のエマ。

「今日は疲れましたよね?タクシーで帰りましょう」

エマはそう言うと、あたしのエナメルバッグを肩にかけてにっこりと微笑んだ。
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