幽霊でも君を愛する
第十三章 惨事と笑事
「・・・で、カップを持った後、何故この惨状に??」

私は大学の講義を終えて、家までまっすぐ帰った。特に用事もなかったし、蔵刃にも会わなかったし、家で待っているユキちゃんの事が気がかりだったから。
今日の朝、改めて彼女の姿を確認したけれど、まだ幼い少女の様だった。下手に色々と教えるとパニックになりそうな上、下手に行動してしまうと、とんでもない事態も起こりかねない。
今日は講義があるだけマシだった。もし昨日、運悪くユキちゃんと対話ができなかったら、事件は増えていただろう。
昨日は、静かで穏やかな夜が過ぎていった。それにようやく安堵した住民達も多かった、これでもう学校を休校にする必要も無くなっただろう。
連不審火事件の元凶であるユキちゃんが沈静化したから、もうこれ以上マスコミがこの件を深掘りする事はないだろう。
幽霊や怪異がが起こした事件なんて、しばらくすれば大勢の人間からは忘れられる。オカルト好きな人は、執念に追い求める場合もあるけど。
そして私が、部屋の鍵を開けて中に入った途端、部屋の中から漂う甘い匂い。カカオの様な匂いだったから、私はてっきり、牡丹がお菓子でも作っているのかと思った。
しかし、廊下のドアを開けた瞬間、急いでカーペットを全力で拭き続ける2人が、気まずい目せんを壁に向けていた。
カーペットを見ると、そこには茶色い滲みと、転がっているマグカップが。そしてその傍らには、濁った色の水が入っているバケツが。
それだけを見て、一体何があったのかは何となく察せるけど、一応2人に聞いてみた。
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