むすんで、ひらいて、恋をして

知らなかったこと

中間テストの終わった学校は、どこかホッとした空気に包まれている。



あゆみちゃんと購買でジュースを買って教室にかえる途中に莉生の名前を耳にした。



「すげえな、莉生、また成績トップじゃん。あいつにできないことはないのかよ」



「マジで、それな」



すれ違ったF組の男子からそんな会話が聞こえてくる。



んん?



成績トップ?



まさか、ね?



うちの学校は、成績上位者を廊下にはり出したりはしないから、わからないけど。



テスト前に、たった数問、問題を解いただけでへばっていた莉生を思い出す。



うん、ない、ない!



むしろ、赤点回避できたか心配だよ。



その日の夜、夕飯を終えると、莉生と一緒に数学の課題にとりかかる。



「あー、マジ、わかんないっ」



「頼むから、隣でグダグダしないで」



「中間終わったばっかりなのに、なんで勉強しなきゃいけないんだよ」



「だから、ここは……」



一通り、数学の解法を説明すると、莉生のノートに挟まれていたプリントがひらりと床に落ちた。



あれ?



これって、この前の小テストだ。



うちのクラスも同じテストやったけど、けっこう難しかった。



プリントを拾って莉生に手渡そうとして、目をみはる。



「莉生、このテスト、……97点⁈」



「っ! 勝手にみんなよっ!」



「隠す必要ないじゃん! めちゃくちゃ点数高いんだから!」



「いや、だから、その」



口ごもる莉生に、ハッとする。



廊下で耳にした莉生が成績トップだっていう話を思い出す。



「ちょっと、莉生、ここに座って」



まっすぐに莉生を見据えて、正座して向き合った。



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