むすんで、ひらいて、恋をして
「キモ。吐くわ」




「はい、本性、いただきましたー。口も性格もいい具合に悪い水島莉生が、どうしてうちの学校の王子様なんだか。あー、不思議だわ~」




「それ、俺のセリフな。ったく、学年一の美少女の正体が、このダラケまくったトドのような姿とはな。アリスを崇拝している男子に、心から同情するよ」




「仕方ないでしょ、第一志望の公立に落ちちゃったんだから。そもそも、学校行きたがらない私に、お嬢様のフリでもして通ってみたら?って言ったのは莉生でしょ?」



「軽い冗談で言ったんだよ。まさか本気にするとは思わないだろ! つうか、完全に頑張りかたを間違えてるだろ。そこまで全力で演じきると、怖いんだよっ」



呆れる莉生から、ぷいっと顔をそむける。



「庶民の私があの学校に通うには、このくらい無理しないと周りの雰囲気についていけないの!」



「かなり間違った方向に暴走してる気がするけどな……。つうか、かえって悪目立ちしてるけどな……」



「莉生は本物のお坊ちゃんだからわからないんだよっ!  庶民の私があの学校に通うことがどれだけのプレッシャーなのか。精一杯無理して頑張ってるんだから、むしろ、もっと褒めて!」



「あー、はいはい、すごい、すごい。アリスは世界一偉いよ、すごいよ、可愛いよ」



「ムカつくっ! 莉生こそ廊下で女子に囲まれて、『散れ! 動けねえ!』くらいのこと、思ってたんでしょ?」




「アリスと一緒にすんな」




「あら? お仲間だと認識してますが?」




「だからって、『お気の毒様』はないだろ?」




ギロっと睨まれて、笑顔を返す。




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