むすんで、ひらいて、恋をして

アリスの涙

家に帰ると、ソファのうえで膝を抱えて座ったまま、アリスは微動だにしない。



「ごめんね、せっかく楽しかったのに」



「なんでアリスが謝るんだよ。つうか、なにも言わなくていいし」



隣に座ると、アリスの頭をぐしゃぐしゃとなでまわす。



唇をかみしめて、一点を見つめたままのアリスにココアを渡した。



ふーっと長い息をはいて、ひとくちココアを飲んだアリスが、唇をゆがめてぽつりと呟く。



「いつもさ、変なところで会っちゃうんだよねー。なんでこんな場所でってところで。なんでだろうねー。一番会いたくない人なのに……」



「ごめんな、俺が誘ったりしたから」



「サボろうって誘ったのは私だよ?」



視線を落としたままのアリスの横顔が、胸に刺さる。



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