許されるなら一度だけ恋を…
「タクシーで行きましょう」

京都の駅に着くと今度はタクシーに乗り、奏多さんの実家へと向かった。

「京都へ来たことは？」

「修学旅行で来たくらいです」

「そうですか。時間があればゆっくりと京都をご案内したかったですけど、それはまた今度にしときますね」

「その時はよろしくお願いします」

『今度』があるのかな、と思いながらも笑顔を見せる。

そして、20分くらいで最初の目的地に到着した。奏多さんの父親が入院している病院だ。私達はタクシーを降りて、病室へと向かった。

「奏多、おかえり」

病室に入ると、上品な微笑みで奏多さんに声をかける女性がいた。そして視線が奏多さんから私へと移り、じぃっと見ている。

「ただいま。こちらは華月の家元のお嬢さんで桜さんや」

「初めまして。華月　桜です」

私はゆっくりとお辞儀をして挨拶をする。

「まぁあなたが桜さん？奏多がえらいべっぴんさん連れて帰って来たからびっくりしてもうたわ」

そう言ってベッドで横になっている奏多さんの父親の方を見る。奏多さんの父親も私を見て笑みを浮かべた。
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