許されるなら一度だけ恋を…
「あれ、起きたん?」

濡れた髪をタオルで拭きながら奏多さんが部屋に戻ってきた。私は何かを訴えるかのようにじぃっと奏多さんを見る。

「えっと」

「汗かいたからシャワー浴びてきた」

「いえ、あの何で私がベッドに?」

「あぁ目が覚めたら桜さんベッドに顔埋めて寝てるから、ベッドに移動させたんやけど」

「それはお手数おかけしてすみません」

私がベッドの上で恥ずかしそうにしていると、奏多さんは笑いながら濡れた髪を乾かしにまた部屋を出て行った。

「お待たせ」

再び部屋に戻ってきた奏多さんは、ベッドにいる私の隣に座る。

「わっ私、ベッドから降りますね」

「何で?ここに居てや」

そう言って私の肩に手を回し、距離を縮めてくる。そのおかげで私の心拍数はとんでもない事になっている。

「えっと、風邪の具合はどうですか?」

「薬飲んで寝たら楽になったわ」

「そうですか。それは良かったです」

確かに私の肩に触れる奏多さんの手にはさっきまでの熱はない。それにしても奏多さんの視線が凄い。私を見つめながらニコニコしている。

「熱もだいぶ下がったし、もう我慢せんでもええかな」

奏多さんはふわっと私をベッドに倒す。あまりにも自然な仕草に何が起きているのか分からず、私は呆然としながら奏多さんの顔を見ている。
< 94 / 121 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop