許されるなら一度だけ恋を…
「桜が華月の家を大事にしてるのは知ってる。俺も一ノ瀬の実家が大事や」

「はい」

奏多さんの顔つきが変わった。真剣な表情で私の両肩をしっかりと掴み、一呼吸してから話を続ける。

「それを踏まえて言わせて欲しい。俺の中にはこの先何があっても桜の事を諦めるっていう選択肢はない。少し時間はかかるかもしれへんけど、必ず解決策を見つけるから……俺を信じて待ってて欲しいんや」

奏多さんの言葉に、私は嬉しいのにただ(うなず)くだけで上手く返事が出来ず、代わりに涙が溢れ出てその涙は止まる事なく流れ続けた。

「意外と泣き虫やな」

私が泣き止むまで奏多さんはずっと抱きしめてくれた。私は奏多さんの胸の中で、しばらくその優しさに甘えさせてもらった。

「そういや前から聞きたかったんやけど、京都で一緒に酒飲んだ時、あれってやっぱり俺に告白しようとしたん?」

「……そうです、この想いは気づかれてはいけないと思いながらも酔った勢いもあって本音が出そうになりました。でも、奏多さん私の気持ちを分かった上で言わせないようにしたんじゃ?」

「いや、酒の勢いとただその場の雰囲気にのまれて好きって言いそうになってるなと思ったんや。俺の事好きでもないのにこのまま告白したら桜が困るやろな思って口を塞いでしまったわけや」

京都で私の気持ちに気づいた訳じゃなかったんだ。でもあの時想いが伝わってしまっていたら、私達はどうしていただろう?
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