それでも、精いっぱい恋をした。
いろんなゲームに手を出したけどけっきょくUNOやジェンガ、トランプのスピードが一番盛り上がる。
というわけで、2学期の昼休みに長らくおこなわれてきたスピードトーナメントがついに決勝戦。接戦をくぐりぬけ駒を進めたのはユズVSわたし。
ここまで来たらもう、絶対に絶対に負けられねえよ。
「春希勝ってね!」
「がんばれ!」
と3つの黄色い声はわたしのもの。だけど他の男どもは負けたのが癪だったのか「どっちが勝ってもいーし」「はやくやれよ」「で、新しいトーナメントやろうぜ」なんて話してる。
ふざけんじゃねー。スピード対決にしようって張り切って言い出したのはイワちゃんとサガミのくせに!
「春希、一週間分のジュース掛けよう」
「ふっ…その言葉、後悔させてみせる」
「「スピードッ!」」
ばしばしばし、っと机にトランプを叩きつける。まさに真剣勝負。
だって一週間分のジュースって。ワンコイン失う。その金でわたしはにぎりめしを買いたい。
勝ち進んできただけあってユズは手ごわい。手の回転がとにかく速い。く…負けたくない!
「はる!」
まーじのまじで超真剣に真面目に集中してやっていたのに、思いもよらぬ声に手が止まってしまった。
ユズの手も止まる。ああでもわたしのほうが止まるのがはやかった。その数秒で手持ちの枚数に差がついたことを肌で実感する。
だけど、でも。
「あー…春希、須賀先輩が呼んでる」
キドっちが邪魔して申し訳なさそうに声をかけてくる。
「今無理勝負中。断っといて」
そう言って勝負を再開させようとしたら手首を掴まれた。
見上げると須賀先輩…1年の秋から2年の春まで付き合っていたひとが突っ立ってる。