白猫王子と俺様黒猫~猫神の嫁なんてお断りですっ!~
 お父さんの問いに、猫神候補のふたりは光る黄金の猫じゃらしを「ふむ」と言った調子で眺めながら、冷静そうにそんな回答をした。

 伝えたいことってなんだろう……?

 もしそうだとしたら、黄金の猫じゃらしが喋るってこと?

 私がそんなことを思っていると――。


『その通り。僕は黄金の猫じゃらしに宿る精霊だよ!』

「わ? 本当に喋った!」


 あまりきれいじゃない猫じゃらしから聞こえてきたのは、小さな子供のようなかわいらしい声だった。

 この声が、精霊……?


「黄金の猫じゃらしに宿る精霊様だって……? ま、まさかこんな場面に立ち会うことができるなんてっ! 感無量ですー!」


 信心深いお父さんは、涙を流しながら感動している。

 ずっと熱心に崇めていた神様にまつわる物が喋り出したんだから、お父さんにとっては涙が出るほど嬉しいんだろうなあ。

 私は「へー、喋るんだ。すごい」くらいだけれど……。

 白亜や黒霧の不思議な力を何度も目にしているから、なんだか段々麻痺してきた気がする。


「それで、精霊さん。俺たちに何か言いたいことがあるの?」

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