オフィスの華(令和版）Episode.０~スノードロップ~

「何で…アイツ俺に嘘を付いたんだ？」

「嘘？」

「兄貴とは全く面識がないと言っていた…でも、末前教授の下なら、絶対に兄貴と面識があったはずだ…」

「・・・アイツ…兄貴とトラブル起こしたんだな…」
耶刃さんがポツリと呟く。
「えっ？」

「ウチの兄貴は傲慢で自分が中心でなきゃ、気の済まない男。その上要領が良くてさ。本当に嫌な奴だ…俺も妹も兄貴には随分と泣かされた」

「耶刃さんが泣かされた?冗談にしか聞こえませんけど」

「そうか？」

耶刃さんはワインを煽り、頬杖を付いて窓越しに眩く光る東京の夜景を見つめた。

「アイツは良くできた人間だ…そりゃ兄貴も鬱陶しいと思っただろうに」

「耶刃さんも彼のコト鬱陶しいと思うんですか？」

「ん、あ・・・俺の出来なかったコトを色々とやりそうな気がするからな…現にアイツに第一の女たちは夢中じゃないか…」


「あ…」

「でも、お前は俺だけを見てくれよ…奈央」
彼は切なげに言った。