地味同盟〜地味男はイケメン元総長〜
 日高くんがケンカしたとか信じてくれそうにないし、それに日高くんも知られたくない様だったし。

 何より話してしまって、その流れであたしが色々ぶっちゃけてしまったことも話さなくてはならなくなったら困る。


 そうだ、その辺りの口止めもしておかないと。


 そう思って、あたしは日高くんの腕を掴んだ。

「え? 何――」

 驚いている日高くんの声を(さえぎ)るようにあたしは口を開く。


「暗かったからちょっと日高くんがケガしちゃったの。あたし手当てするから、みんなは遊んでて。後で電話するから」

「え? 大丈夫? ケガしたってどこを?」

 あたしの言葉に花田くんが日高くんを心配するけど、今は早く別行動をとりたかった。


「口元をちょっと切っちゃっただけだから大したことないよ。でも手当はしなきゃね」

 言いながら、日高くんの腕をぐいぐい引っ張る。


「お、おい。……倉木さん?」

 戸惑い気味な日高くん。
 でもちゃんと話をするべきだと思っているのは彼も同じはずだ。


「だからあたしだけで大丈夫。皆は楽しんでて!」

 そう言ってあたしは日高くんを引っ張りながら皆から離れて行った。
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