桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚で隠された愛情に
「え! 匡介さんが倒れた?」
月菜さんの暮らすレジデンスに帰ってきて、バックを開けて気付いたスマホの着信履歴。十回を超える匡介さんからの着信に何が起きたのかと急いでかけなおした。
電話に出たのは匡介さんのサポートをしてくれている男性社員からだった。
『ええ、今日は昼食も取らず仕事をしていたんです。目の下の隈も酷かったし少し休むように声を掛けたんですが、言う事を聞いてくれなくて。でもさっき会議に行く途中で倒れてしまって……』
「すぐに行きます!」
医務室で休んでいる事を確認すると、私は月菜さんに事情を話してタクシーを呼んでもらった。スマホと鞄だけを持って急いでタクシーに乗り込み行き先を告げる。
いつも無理ばっかりするから! ご飯も食べなくて隈も作って、それじゃあ私が離れた意味が無いじゃない。
もう少し、あと十分も走れば匡介さんの会社に着く。そう思ったのに、こんな時に限って渋滞にハマってしまう。
「すみませんお客さん、この先工事しているみたいでもう少し時間がかかりそうです」
もう少しってどれくらい? それさえ待てないほど気が急いていた私は財布から御札を取り出して運転手に渡す。
「ここでいいです、ここで降ろしてください!」
そう言った私に驚いてドアを開けた運転手、私はその車から飛び降りるように出てそのまま走り出す。
「お客さん、おつり……」
運転手の言葉も耳に入らない、ただ少しでも早く匡介さんの傍に行きたかった。誰よりも私が彼の傍にいたい、頭の中にはそれだけしかなかった。