冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


退職届を出し、引っ越しをし、岩倉さんと同居生活を始めて二ヵ月。
再就職してから一ヵ月。

岩倉さんが紹介してくれた再就職先は、岩倉さんが顧問弁護士を務める、全国的に名前の知れた不動産会社の事務だった。

取締役は岩倉さんのおじさんで面接もなしに話が進み、本社の総務部に配属されると私が知ったのは、初出勤日の三日前。

岩倉さんに言われるまま、たしかに履歴書は一通書いて渡したけれど、まさか私が知らないところでそこまで話が進んでいるとは思わなかったので、教えられたときにはとても驚いた。

そして、実際働いてみて、もっと驚いたことがある。

なんとこの会社、サービス残業はほとんどなく、福利厚生もしっかりとしている上、どうかすると十九時には帰宅できるという、誰から見ても真っ白なホワイト企業だった。

働き始めて三日ほどは、十八時を過ぎるとポツポツと帰り始める社員に驚愕していたのだけれど、二週間経った頃にそんな光景にもようやく慣れはじめ、一ヵ月経った今は、私も手元の仕事がない限りは周りの社員同様に定時を過ぎると退社準備をしている。

夏だったらまだ空も明るいような時間帯に、部長に「お先に失礼します」と言うのは気が引けるし怒鳴られるんじゃないかと呼吸が浅くなるけれど、そんな心配はよそにいつも笑顔で送り出される。

この一ヵ月、怒鳴っているところも見かけないし、私がミスしても〝怒る〟というよりも〝注意〟をされるだけなので、部長はとてもいい人なのだと思う。

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