冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す





「なにかお手伝いありますか?」

出穂が、遠慮がちに俺の手元を覗き込んで聞く。
蒸していたロールキャベツはもう出来上がるし、帰りがけに買ってきたパンはすでに皿に移して配膳済みだ。

「特にない」

スライスしたトマトとモッツァレラチーズを交互に並べていくと、チーズがひとつ余ったので、まだ隣にいる出穂の口に詰め込む。

こいつは口が小さい。ひと口大のチーズをもごもごと口を動かして食べ終えた出穂に「うまいか?」と聞くと、へにゃっと力の抜けるような笑みが返ってきた。

「はい。高級で幸せな味がします」
「チーズ自体は嫌いじゃないんだな」

トマトとチーズのサラダにオリーブオイルをかけながら言うと、出穂は珍しく眉を寄せた。
先日、軽い異臭騒ぎとなったブルーチーズを思い出したらしい。

「え、だってあれは……ああいうカビっぽいのは、その……やっぱりカビですし、本当に申し訳ないんですけど、ちょっと。岩倉さんも、匂いにギブアップしてましたよね? そういえば、あのチーズ、密閉容器に封印したあとどうしたんですか? すごい高い物なんですよね?」
「そうだな。貰ったグラムだと一万弱ってところだろうな。一度開封した後だし他の人間に譲るわけにもいかなかったから、佐鳥に渡した」
「お友達ですか?」
「ただの腐れ縁の昔馴染みだ。これ、テーブルに運んでもらえるか。こっちがおまえの分」

深めの皿にロールキャベツを並べて渡すと、出穂が受け取る。

食事をしながら「そのうち佐鳥に紹介する」と言った俺に、出穂は困ったように笑った。


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