冷徹弁護士は奥手な彼女を甘く激しく愛し倒す


インターホンが鳴ったのは、ファッションビルでシンデレラ体験をした翌週、土曜日のことだった。

これまで家主である岩倉さん不在時にインターホンが鳴ったことは二度。
両方とも宅配業者だったため、岩倉さんに電話で確認した上で代わりに受け取ったのだけれど、今日の訪問者は違うようだった。

ドアホンに映る男性は、どう見ても宅配業者ではない。
服装までは見えないので断定はできないけれど……なんていうか、画面越しだというのに軽薄さというか、気軽さが伝わってくる。

こちらに向かって手を振る男性に困惑しながらも対応すると、すぐに声が聞こえてきた。

『あ、出た出た。俺』

……詐欺だろうか。
疑いながら「どちら様ですか?」と聞くと、男性は驚いた顔をする。

『あれ。岩倉は?』
「今は少し出てまして……どちら様でしょうか?」

名前を言ってもらわないことには岩倉さんに確認のしようがない。
なので再度聞いた私に、男性はやっと『ああ、ごめんね。佐鳥です』と答えた。

「佐鳥さん……あ、チーズの……?」

ブルーチーズの処理に困ったとき、たしか岩倉さんが〝佐鳥〟と言っていた気がして聞くと、画面の向こうで佐鳥さんが不思議そうな顔をした。


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