ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~


「気持ちを抑えられなくなってしまうんですか、あの柚瑠木(ゆるぎ)さんが……?」

 普段は大人しい月菜(つきな)さんに強気で迫られて、たじろいでいる柚瑠木さんを想像すると笑いが込み上げてくるわ。
 あの柚瑠木さんが月菜さん相手にどこまで痩せ我慢出来るのか、その場で見せてもらいたいくらいよ。 

「そうね、柚瑠木さんもきっとまだ戸惑ってるんだと思うわ。月菜さんは自分ばかり理性的でいようとする彼の殻を壊してあげればいいのよ。」

 柚瑠木さんが何故、必要以上に月菜さんと距離を取ろうとするのか私には分からない。けれどそんな柚瑠木さんの頑なな心も月菜さんならきっと……

「柚瑠木さんにそんな事をして、本当にいいのでしょうか?もし彼を傷付けてしまったら、私は……」

「優しい人は嫌いじゃないわ、でも私は月菜さんに自分ばかりを犠牲にする女性にはなって欲しくないの。それにあなた達は夫婦なんだもの、分かり合うのに少し傷つけ合ってしまうこともあるはずよ?」

 私は柚瑠木さんの事も嫌いじゃないけれど、応援したいのは二人の関係を前向きに変えていこうとする月菜さんの方なの。
 この真っ直ぐな月菜さんの気持ちからは、柚瑠木さんだって逃げることは出来ないはずだもの。

香津美(かつみ)さん、ありがとうございます。本当は挫けそうでしたが、話を聞いてまだまだ頑張れそうです。」

 笑顔になった月菜さんにホッとしていると、スマホにメッセージが。ああ、もう我慢出来なくなってしまったようね。

「それなら良かったわ。そろそろ柚瑠木さんも帰ってくるみたいだし、私も自分の部屋に帰るわね。」

 そう言うと、持っていたスマホの画面を月菜さんに見せたの。

『柚瑠木が心配して焦っている、そろそろ月菜さんの所に帰すから』

 心配して焦るくらいなら、最初から可愛い妻を置いて出ていくような事はしなければいいのにね?けれど、そのメッセージを見た月菜さんは嬉しそうで……
 月菜さんから見送られ帰る途中、少し慌てた様子の柚瑠木さんとすれ違う。今度こそ素直になりなさいよ?心の中でそう言いながら、私も聖壱(せいいち)さんの待つ部屋へと戻った。


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