ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
聖壱さんから紅茶の乗ったトレーを受け取ると、それぞれの前に置いていく。それが終わると聖壱さんを見て、話していいという意味を込めて静かに頷いた。
「まず俺が一つだけ絶対に間違いないと言えるのは柚瑠木にとって女性として特別なのは月菜さん、貴女だけなんだ。それはだけは忘れないで欲しい」
聖壱さんが最初にそれを伝えるという事は、【ますみさん】という人は月菜さんを不安にさせてしまうような存在と言う事なのかもしれない。
そうでなければ聖壱さんは柚瑠木さんの許可なく彼の気持ちを勝手に伝えようとする人ではないのだから。
「確かにますみさんも柚瑠木にとっては特別な存在だが、そこにあるのは月菜さんへの感情と違うものなんだ。柚瑠木は……アイツはまだ傷を抱えたままだから、月菜さんがずっと傍で癒してやってくれないか?」
「それって、いったいどんな?」
……柚瑠木さんが傷を抱えている?そんな話を聞いたのは初めてだった、もしかしたら簡単に人に話せないような深い傷なのかもしれない。普段の柚瑠木さんの冷たさから、なんとなく分からないでもない気がする。
私だけでなく柚瑠木さんの妻である月菜さんも何も知らなかったようで、戸惑った様子を見せながら聖壱さんに聞き返した。
「これ以上は俺の口からは言えない。だけど、月菜さんは柚瑠木の気持ちを信じて、ちゃんとアイツと向き合って欲しいんだ。俺ではダメだったけれど、月菜さんがそうしてくれればいつかはきっと柚瑠木だって……」
普段見せない聖壱さんの真剣な表情、彼は本気で月菜さんに柚瑠木さんを救って欲しいと思っているはず。