ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
なんだかんだで、結局二人は親友みたいなものよね。二人の関係を羨ましく思いながら、とりあえず安心してキッチンに向かおうとしたその時……
「はあ? そんな訳ないだろう、お前は月菜さんがそんな女性じゃない事が分からないのか?」
いきなり大きな声を出した聖壱さんに驚いて、リビングの扉から様子を窺う。さっきまでソファーに座っていた聖壱さんは立ち上がり苛立っているようだ。
柚瑠木さんはいったい何を言ったのだろう?
「……賭けてもいい、月菜さんはお前から逃げたりしない。逃げるとしたらそれは……柚瑠木、お前の方だ」
そう言った後、聖壱さんは悔しそうな顔をしてスマホを耳から離した。多分、一方的に柚瑠木さんが通話を切ってしまったのでしょうね。
「チッ、アイツはいつまでも……」
「……誰もが聖壱さんの様に前向きに生きている訳じゃないのよ? あまり追い詰めてしまっては駄目」
ゆっくりとリビングの扉を開けると、聖壱さんは大きな溜息をついた。本人もちゃんと言いすぎた自覚はあるのだろう。
「分かってる、だけどこのままじゃ月菜さんが……」
「大丈夫、柚瑠木さんにちゃんと聖壱さんの優しさも月菜さんの想いも届いているはずよ。少しずつだけど彼は変わり始めているから」
そう言ってニッコリと微笑んで見せれば、聖壱さんの表情もフッと和らいだ。そのまま肩を抱かれ二人でソファーへと腰かける。