ずっと甘溺愛婚 ~それでも性悪お嬢様は俺様御曹司に溺愛される~
「……見つけられますか、私に? 変わることが出来るのでしょうか、私と匡介さんは」
少し色素の薄い杏凛さんの瞳が不安そうに揺れている、それでも彼女は前に進むことを望んでいるはずだから。私と月菜さんは杏凛さんの手に自分たちの手を重ねて微笑んで見せる。
だって杏凛さんと匡介さんならば、その幸せをきっと見つけられるに決まっている。
「大丈夫よ、私達も最初はゼロから始めたのだから」
「そうです、きっと匡介さんも杏凛さんとの関係をより良いものにしたいと思っているはずです」
私たちの言葉を聞いて小さく頷いた杏凛さんは、何かが吹っ切れたようにも見えた。彼女はこれから変わっていくのでしょう、匡介さんとの結婚を契約だけでないものにするために。
ちょうどその時、聖壱さん達が話を終えてこちらに歩いて来るのが見えた。
「杏凛、話は終わったか? そろそろ帰る時間だ。先に車に乗っておいてくれ」
「……はい」
匡介さんは杏凛さんの隣に立つと、いつもの不機嫌そうな顔のまま彼女に車の鍵を渡す。杏凛さんは鍵を受けとると、私達に挨拶をして店を出て行った。
……まだまだ杏凛さんと匡介さんが分かり合うには時間がかかるのかもしれない。
「俺達も帰ろうか?」
聖壱さんにそう言われて私もバックを肩にかけて立ち上がる。
「ええ、先に失礼するわ。またね、月菜さん」
彼が差し出した腕に、自分の腕を絡め寄り添うように歩いて行く。それを月菜さんがジッと見ているのが分かる、彼女も柚瑠木さんと同じことがしたいのかしらね?
幸せな気分で聖壱さんの車に乗り込むと、店の中で匡介さんと月菜さんが何かを話している様子が見えた。
「あの二人が、どうして……?」
月菜さんが行方不明になったあの日、やはり匡介さんが何か関わっていたのかもしれない。真剣な表情の二人が気になりながらも、私と聖壱さんはこの件は見守ることにしたのだった。