飴色溺愛婚 ~大胆不敵な御曹司は訳ありお嬢様に愛を教え込む~
契約結婚……始まりは想像よりも甘く


「あの、ここに私たち二人で暮らすんですか?」

 見合いからたった数日で、私は新河(しんかわ)さんの持つ邸宅の一つで共に暮らすことになった。新河さんは最初からそのつもりだったらしく、あっという間に父から了承を得てしまったのだ。
 今まで外泊どころかろくに外に出そうともしなかった父が、新河さんの話にはすぐに首を縦に振るのだから驚かずにはいられない。
 新河さんと父はお互い対等な関係なのだと思っていたのだけど、もしかして違うのかしら? 疑問ばかりが次々と浮かんでくる。

「ああ、千夏(ちなつ)の住んでいた屋敷に比べれば小さいだろうが二人だしな。もし気に入らなければ別の家を用意するから遠慮なく言えばいい」

 そう言って彼は笑うけれど、これでも十分すぎるほど広いと思う。部屋一つでほとんどの時間を過ごしていた私には考えられない生活になりそうで……

「とんでもないです、新河さんが用意してくださったこのお屋敷でも私には広すぎるくらいで」

(かい)だろ、千夏」

「は、はい。櫂……さん」

 男性をこうやって名前で呼ぶこともまだ慣れない。唯一話すことのあった柚瑠木(ゆるぎ)兄さんだって身内だからという気安さがあった。
 自分の夫になった人とはいえ、やはりまだ緊張もあってぎこちない態度になってしまう。
 記入済みの婚姻届けは櫂さんがその足で提出してきたと言っていた、もう私は新河 千夏になっているらしい。いまだ結婚したという実感のわかないまま、私は櫂さんに背中を押され屋敷の中へと入っていった。


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