入れかわりクラスカースト


足を闇に踏み出した時だった。


視界の端に、ぼんやりと光が見えたんだ。


あれは──?


「スマホ?」


どうしてあんなところに?


フェンスを乗り越えた先に、光り輝くスマホ。


画面が上を向いているからか、光が溢れていた。


今、メールでも届いたのだろうか?


私が死のうと決意した、その時に。


フェンスを伝いながら、私は引き寄せられるようにスマホに向かう。


今もまだ輝いているスマホを、そっと拾う。


一体、誰のだろう?


まるで、飛び降り自殺をしたひとの置き土産みたいだ。


揃えられた靴と同じような。


手のひらから溢れ出す、眩い光。


目を細めて画面を見ると、そこにはある文字が並んでいた。


『入れかわりクラスカースト』


なんだろう?


なにかのゲームだろうか?


そもそもスマホを持っていない私は、どう操作していのかもわからない。


けれど物珍しくて、自殺しようとしていたことを少しだけ忘れた。


ここを押せばいいのかな?


屋上の端っこ、すぐそこは奈落の底だというのに、私はその『クラスカースト』の文字を指で押す──。


「えっ?」


そこに現れた文字に、思わず声が出た。





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