愛の距離がハカレナイ
「武田‥。」

私はいつの間にか水島に背中から抱きすくめられていた。

「恥ずかしいから、こっち向くなよ。」

水島の腕の力が強くなったような気がする。

「近くに居すぎて、武田との関係を壊すのが怖かった。武田が‥、いや阿里がそばで寄り添ってくれたら‥、俺はいつの間にかそんな思いに取りつかれていたんだ。」

水島の低い声が続く。

初めて下の名前で呼ばれて、身体が一瞬ビクついた私。

「…阿里は俺以外に気になる奴でも居るのか?」

私はゆっくりと首を横に振る。

「阿里にこんな風に触れたかった。」

私の耳にかかる水島の息が熱い。

そして私の身体にも熱が帯びて来た。

私もこの温もりを求めていたのかもしれない。

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