愛の距離がハカレナイ
「それなら自分の気持ちを話して、水島の気持ちも聞いてみたらいいじゃない。」

「私ね、篤志に強引に婚姻届を渡された時ね。」

香澄が私の肩に触れた。

「どうしてこんな大切な話が私達の中で出て来なかったんだろうってつくづく考えたわ。多分お互いがお互いを失いたくなくて避けていたの。」

私はそっと目をつぶる。

「水島の気持ちは本物よ。それでもそんな大事な事を阿里に話さなかったって事は、きっと水島なりの考え方があるんだと思うの。」

私の中には祐介の姿が浮かんでくる。

「結論を出すのは最後で良いのよ。まずは自分の気持ちをさらけ出してみなさいよ。」

「香澄‥。」

「まあ、あの水島が、阿里を簡単に手放すとは思えないけどね。」

それだけ言うと、香澄はさっさと自分のデスクに戻った。










< 92 / 155 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop