花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 「ありがとう、凛!すっごくすっごく嬉しい」
 「俺がやりたかったから作っただけだ」
 「ううん。それでも嬉しいの、こんな事されたら、ますます好きになっちゃ………っ!?」
 「………ぇ……」


 嬉しさのあまりにポロリと本音がもれてしまう。
 途中で自分の失態に気付いたが、もうすでに遅い。凛は驚いた表情のまま固まっている。それにほんのり耳が赤くなっている。

 「い、今のは、その、嬉しすぎてもれてしまったというか、つい……」
 「………俺だって好きじゃなきゃこんな事しない……」
 「………え、えぇ………!?」
 「「……………」」


 2人は向かい合ったまま、お互いに顔を真っ赤にさせて固まってしまう。
 フィオの隣りには、花が見つけた昔の雅と凛、そして雅の祖父が写った写真。もう1つは、作業場で出来上がったばかりのテディベアを持ちながら微笑む、大人になった雅の写真。少年のような満面の笑みは、花が会っていた凛の体に入っていた雅と全く同じだった。


 そんな笑みを浮かべながら、凛と花を微笑ましく見つめているのだろうか。
 どこかからスターチスとアイスティーの香りが風にのって2人を包んだ。

 
 花筏の下に沈んだテディベアは、スプーン1匙の幸せと恋を運んできてくれた。



                                (おしまい)
 

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