花筏に沈む恋とぬいぐるみ




 そのテディベアの瞳は、キラキラと眩しいほどに輝いていたのだ。
 右目は赤色、左目は緑色。他のテディベアとはそれは全く違うものだった。それを見て、凛は感嘆の呟きをもらした。見たこともない綺麗なものが目の前に表れると声も出なくなるらしい。


 「赤い瞳はガーネット、緑色はエメラルドだそうです」
 「……宝石の瞳」

 凛はそのテディベアをとても珍しそうにまじまじと見ている。やはり、宝石の瞳のぬいぐるみなどなかなかないのだろう。テディベアの顔を近づけて見入っている凛に花は言葉を続ける。


 「このテディベアには四十九日の奇の魂が入っています」
 「え……」
 「神谷さん、このテディベアは何のために作られたのか、調べていただけないでしょうか?」


 驚いた様子で、花と宝石の瞳をもつテディベアを交互に見ている凛に、真剣な表情で見据える。
 

 「お代はこの瞳の宝石でもかまいません。よろしくお願い致します」


 花は深々と頭を下げたため、目の前の彼がどんな表情をしていたのかわかるはずもなかった。



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