花筏に沈む恋とぬいぐるみ



 全国に13家系しか見えないから、またはただ単純に四十九日の4と9を足した数だから、十三師と呼ばれているなど、名前の由来については諸説あった。

 その十三師に見て貰うというのは、一般的にはなっておらず、「十三師にお願いした」という話を聞くと「珍しいね」というぐらいのレベルのものだった。それは家族や親しい人なのに魂がどこにあるのか気づけないというのは恥ずかしいという世間の目と、調べるには大きな金が必要なためだった。


 「なるほど、話はわかったよ。でも、結論から言おう。これは俺がつくったテディベアではないよ」
 「え……」
 「確かに花浜匙のマークはあるし、この刺繍やテディベアの特徴から花浜匙のものであるのは間違えがないよ。けれど、これは僕が作ったものではない」
 「それは、どういう事ですか?」


 言っている意味がわからずに、花はすぐに聞き返してしまう。
 この店にはこの男以外にもスタッフがおり、何人かで作っているのだろうか。花はそんな考えしか思いつかなかった。

 「これは、俺の祖父が作ったものだと思う。こんな大粒の宝石をクマの目する、なんて依頼を俺が忘れるはずものない。と、なると可能性はそれしかないんだ。俺の祖父はこの店を立ち上げた人で、前の店主になる。そして、その祖父はもう亡くなっている」
 「………そうでしたか。昔の依頼については調べる事は出来ますか?」
 「もちろん、オーダー表は歴代のが残っているから可能だけど、かなりの数があるから時間がかかると思うよ?」
 「時間はかかっても大丈夫です。調べていただく依頼料もお支払いしますので、ぜひお願いします」
 「お金なんていらないよ。かわりに、お願いした事があるんだけど」
 「はい。私で出来る事であれば」



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