花筏に沈む恋とぬいぐるみ
凛が何かを話している。
耳には入ってきているのに、頭では理解出来ないし、瞼も指一本さえも動かせない。
ソファに座り、首をぐらぐらさせながら花はウトウトとしてしまう。そのうちに、体に何か温かいものを感じ、そしてすぐにそれは離れた。少し名残惜しい気もするが、いつの間にか体が横になっており寝やすくなっていた。花はそれだけで満足だった。
温かい部屋に、パラパラとページを捲る音。
誰かが居る部屋で寝ることなど、いつぶりだろうか。安心する。
そう思い、花はあっという間に眠りに落ちたのだった。
それから、どれぐらい時間が経ったのだろうか。
花はある物音が聞こえたような気がして、意識を覚醒させる。
それは人の声だった。凛の声だ。
けれど、声はそれだけではない。
「だから、〇〇も話せばよかっただろう」
「俺の事はクマって呼べ」
「大丈夫だよ。この子はよく寝てる。調べものも終わったし、続き教えてるよ。時間は限られてる」
「あぁ。ちょっと待て」
まだ半分寝ている状態なので、会話はよく聞こえないし、視界もぼやける。
が、凛の横で何か小さなものがトコトコと動いている。
そして、持っていた大判のブランケットを持って、花が寝ているソファの方へと近寄ってきた。