花筏に沈む恋とぬいぐるみ
10話「最後の夜」





   10話「最後の夜」



 その日、花と父親である宝石の瞳のテディベアは凛の工房を見学させてもらえる事になった。
 凛が「ぜひ見ていきませんか?」と言って、案内してくれたのだ。


 工房には窓側に木製のテーブルが荷台並んでいた。壁には設計図やオーダー表がかかれており、逆側の壁面には棚が天井まで並んでいた。広い室内は小さな手芸店のように布やビーズ、綿や糸が並んでいた。彩り取りの材料は花屋にも見える。


 「……テディベアだけじゃくて、お洋服も作ってるんだね」
 「そうだね。オーダーがあれば何でも作るよ。ドレスやタキシード、メイド服。それにどこかの学校の制服も作ったことがあるよ」
 「一人で全て作ってるの?あ、でもテーブルが2つあるから、他にスタッフさんがいるの?」
 「………いや、一人だよ」


 凛は右側のテーブルを見つめながら、しばらく考えた後にそう教えてくれる。その視線は何か遠くを見ているようだった。花は、前店主である祖父の面影を見ていたのだろうか、と思った。



 右側のテーブルにはクマのぬいぐるみの材料が多く置かれており、左側は様々な布が整理されて棚にしまってある。こちらでは洋服を作ってるようだった。仕事毎に場所を分けているのだろうか。



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