販売員だって恋します
「この可愛い口が、俺のことを大好き、なんて言うから。」
え……と、さっきからどうなってるの?!

「つまりね、私たちはお互い想いあっていた、ということですね。」
「…っ?!おも……?うそ……、だって大藤さん、本気にならないって。」

「久信、です。さっきも言いましたよね。本気にならないのはあなたに会う前まで。諦めるつもりだったのも、あなたに大好きと言われる前まで、です。むしろ私を本気にさせたんですから……」

知りませんよ?と耳元で楽しそうに囁かれる。
「ひゃん……っ。」

今まで見せていた楽しそうな中にも、どこか冷静そうな感じではなくて、本当に楽しそうな大藤のその表情だ。

「今すぐあなたを攫ってしまいたいけれど、それは無理ですね。」
「そうですね。大藤さんもお仕事ですものね。」

「由佳……」
ん?

壁に身体を押し付けられて、唇が触れそうに近づく。
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