販売員だって恋します
さっきは大藤の指が、ゆるりと由佳の唇を撫でて、本気にならなかったのは、由佳に会う前までだと言ってくれた。

その声は今まで聞いたことがないような、熱を孕んだ声で、その声だけでもどきどきしたのに。

そして、大藤の表情も今までの冷静で、どこか距離を置いたような表情ではなかった。

もちろん、クールなイメージは変わらないのに、意外と情熱的な面を見て、驚いたし、嬉しかった。

『今すぐあなたを攫ってしまいたい。』なんて、言葉。
思い出したら落ち着きかけた鼓動が、また騒ぎ出す。

名前で呼ばないと、お仕置きだなんて。
呼びなさい、と唇で甘い催促をされてしまった。

どうしよう……。
いいのね……好きになっても。
好きって言っても。

そんな日は来ない、と思っていたから、信じられないくらい幸せな気持ちの由佳なのだった。

帰ってきた由佳を見て、神崎が奥歯を噛み締めたことを由佳は知らない。
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