販売員だって恋します
そんなイタズラ心が芽生えた由佳を横目に見て、大藤が眼鏡を押し上げ、笑みを見せる。

「お互いに仕事が忙しいので、なかなか会えなくて。あとは彼女の家で手料理をご馳走になったりしますよ。彼女、こう見えてとても家庭的なんです。」

そんなことを言われた由佳は口に含みかけた水を吹き出しそうになった。
自慢ではないが、家庭的には程遠いと思う。
澄ました顔で大藤が投げた玉は、暴投以外のなにものでもない。

こいつ……。
もうすでに心の中では、こいつ呼ばわりの由佳だ。
先程の適当なことを言った由佳への仕返しに違いなかった。

「そうなんですか、それはいいですね。今日はお二人共楽しんでいってくださいね。」

「ありがとうございます。」
2人はにっこり、と笑顔を返す。

(居酒屋……ですか)
(手料理―?)
ひそひそとやりとりをする2人を微笑ましげに、男性は見守る。

食事がスタートしてワインが振る舞われ、その高級フレンチに由佳は舌づつみを打つ。
見た目にも手の込んだ料理だ。
< 17 / 267 >

この作品をシェア

pagetop