販売員だって恋します
まあ、彼女を家に呼ぶにあたって、やることをリストにしてくれ、と翔馬に言われた時は、さすがの大藤も膝から崩れそうになったが。

それでも今は正式にお付き合いしているようだし、少しづつ、進んでいってもいるようなので、もう翔馬のことはほとんど、心配はしていない。

正直、翔馬があれだけ元宮奏に夢中なのが、理解出来ないこともあったのだが、今は完全に否定は出来ないような気がする。

その人柄や存在に、どうしようもなく惹きつけられることがない、とは言い切れないからだ。

今まで、大藤にとっての最優先は、成田家なのだった。
それが盲目的でも、不健全でも全く構わない、とすら思っていたのだ。

それでも、大藤自身へののアプローチは後を絶たない。

大藤は後腐れさえなければ、身体だけの関係など全く厭わなかった。
むしろ、割り切れるなら、それだけでいいとさえ考えていたのだ。

それを、由佳が悪戯っぽく『久信さんとは居酒屋に行く』なんて、言うから。

一瞬、そんな姿が目に浮かんだ気がして、悪くないと思ったのだ。
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