友達作りは計画的に

ナッチーと富田がトイレに行って静かになると今度は最近放課になると仲の良い友達の教室に行ってしまう斉藤がナッチーの席に来た



「おいっす~っ」


「斉藤さん、珍しいね
どうしたの?」


「そろそろ部活の休みの日は決まったかい?
探検、探検~
まさか忘れてたんじゃないだろうね?」



放課にナッチーや富田と一緒に何度か話したりもしているのに彼女からは何のリアクションもなかったから岡崎も完全に忘れていた
入学式後に行ったカラオケ帰りの高畑台駅で話していた時に、岡崎は『部活の休みがいつになるかまだわらからないからある程度決まったら教える』と言っていた事をすっかり忘れていてハッとした



「まだ一般生徒の体験入部も始まってないから今いる一年生メンバーが交代で掃除しないといけないから……
一応今週と来週は……」と言い訳も込みで何日か休む予定の日を教えると明日の金曜日に行く事になったのだが彼女は笑いながら嫌味っぽく言った



「て言うかさ、あんた完全に忘れてたでしょ?
せっかく誘ってあげたのにマジであり得ないんだけど~っ!
アハハッ まぁいいんだけどね
忘れてた罰として金曜日は岡ちゃんの奢りだからね
て事で金曜日学校終わったら一緒に帰ろうね
とりあえずそれまでは秘密って事で」



最初は本当に行くと思ってウキウキしていたが富田が現れたインパクトで約束の事すら完全に忘れさられていた
しかし久しぶりに彼女と二人で話すと『斉藤さんと二人だけなら、それはデート?』と再び彼女とのその先まで想像してしまい期待でニヤケながら彼女からの罰を素直に受け入れた



『でも怒ってなくて良かった
斉藤さんとまたゆっくり話せるんだからご飯を奢るくらい全然オッケーだ』



岡崎は浮かれながら過ごし、翌日の授業も終わり生徒は帰りだした

今日は富田が取りたい資格の補習授業の説明会がこれからあるので彼女は「んじゃ私はちょっくら行ってくるわ」と手を振って教室を出て行くと斉藤が岡崎とナッチーの机の間に入ってきた



「岡ちゃん、行くよっ」


ナッチーにも内緒と言っていたので岡崎は話さずにいたのだが斉藤が堂々と言うので岡崎は驚き、何も知らないナッチーはさらに驚いて彼女を見た


「あれ? 珍しい
じゃあ私も一緒に帰る~」


「いいよ
今日さ岡ちゃんと高畑台駅周辺のお店探しに行くけどナッチーはどうする?」


「えぇ~っ!?
行くなら行くってもっと早くに言っといてよ~っ
うわぁ 超行きたいけど今日は帰って家の用事しないといけないからムリ……
今度一緒に行こうよ
私も行きたかったぁぁぁぁ
何か仲間外れにされた気分~」


「あ~そうだった……
ごめんごめん 違うんだって~
岡ちゃんも部活あるからさっき聞いたら休みが今日だったから急遽今からになっただけだから仲間外れにはしてないって
ねぇ岡ちゃん?」


『さっき聞いた??
て言うか昨日決めたじゃん……
内緒にしとくように言っときながら……何か怪しい誘いだな……』


しかし、そうは思ってもこの流れで言うとまた岡崎までとばっちりを食らうのでこの場は斉藤に話を合わせておく事にした


「あれ?
てっきり斉藤さんからナッチー言ってあるのかと……」


「私は岡ちゃんが言ってるかと思ってたから」


これ以上何か振られてもいい言い訳も思い付かないので『俺に話を丸投げするな!』と斉藤に擦り付けようとしたが、何を考えているかわからない彼女は受け取りを拒否してお互いになすり付け合っているとナッチーはそんな二人を見て笑いだした


「アハハハハッ
あんたら二人とも他人頼りすぎ~
まぁ部活やってるから今日はしかたないからいいけどさ~
次は私もちゃんと誘ってよね!」


「わかってるって~
今度は三人で予定組もうね
ツバサも来るなら四人で行こうか」


高畑台駅までは三人で帰ったが、ナッチーもこういう事はよくあるらしく疑いもなく信じていて「それじゃいいお店見つけたら教えてね~」と笑顔で手を振って別れ、彼女を見送ってから駅を出た



「斉藤さんてもしかしたらナッチーとはあんまり……?」


電車が動きだしてナッチーには絶対に聞こえないようになってから斉藤に聞くと、彼女は少し企んだ顔をしながらも悪びれる事もなく言った


「ううん 全然!
ナッチーとは超仲良くしてるし私はあの子好きだよ
好きとか嫌いとかじゃなくて、せっかくの高校に入って最初の男子友達の岡ちゃんだからお邪魔虫なしでちょっと話たいかな~って思ってね」


「何か意味深な……て言うか俺が最初なの?
別にいいんだけど他にいっぱい話してる人いたじゃん」


「だってあのカラオケメンバーは逆方向だから、あの日一番話したのって岡ちゃんじゃない?
まぁ今のところ彼氏もいるし変な意味じゃなくね」



彼女の最後の一言に岡崎の気持ちが少し表情に出てしまったらしく「……って、岡ちゃんちょっと残念がってる?」と斉藤は笑ってきた   


「ハハッ……ちょっと……ん~っ かなり……なんてね」 


「アハハハハッ
岡ちゃんて奥手そうたけど意外とこういう話題に乗ってくるよね
何かね~ そういう所も不思議だからちょっと興味あって二人きりで話して探ってみたかったのよ
まぁとりあえず歩きながら話そうよ」



気を取り直して歩きながら話していると、ナッチーがいると岡崎イジリをしたがるから笑いになってしまって警戒して深掘りが出来なさそうだし、ナッチーや富田と話すとお互い下ネタ好きなのでどうも話が下ネタ方面に行ってしまいがちなので斉藤の聞きたい事や普通に会話をして交流を深めたいと言う本来の目的からは離れてしまいそうだから今回は二人で話したかったのだと理由を打ち明けてきた



「それにさ、ツバサとナッチーが今日は用事ってのも知ってたからちょうど良かったんだよね」


「確信犯じゃん
だからわざわざナッチーに教えたのか」


「うん それにナッチーが知れば強制的に次の予定決めてくれるだろうから私は楽だもん」


「腹黒過ぎる……やっぱり女子は怖い」


「ヒャァ~ッハッハッハッハッ
私って意外とこういう子よ
腹黒じゃなくて頭がキレるとお言い」


「いや、どう考えても腹黒女だって
見た目がクールだから高笑いが似合うな……」


スラリとして足も長く顔も綺麗な斉藤と歩いていていると「何であんな男と……」「彼女可愛い」など他校の生徒が話す声も聞こえてくるが、普段富田がいる時のそこかしこから聞こえてくるヒソヒソ話が激しくてかなり慣れてしまっていたので多少は気にはなるが以前のような居づらい気持ちは持たなくなっていた
< 9 / 18 >

この作品をシェア

pagetop