終わらない夢 II
「はっ…!」
思わず飛び起きた。
あの夢は?誰のこと?雪って、だれ?いったい誰のなに?私の記憶?いや、お父さんは再婚なんかしていないし、雪なんてひとと会ったことも…ない。
「…あれは…」
変な汗もかいていた。だめだ、これから遊びに行くのに。まだ時間はあるから、シャワーを浴びよう…。


「荷物は…まあ、大丈夫かな」
「ん…優奈、もう行くのかぁ?」
「うん。お父さん、二日酔いでしょ」
「うぁぁ気持ち悪い…」
「ほら、お水あるから飲んでてね。私行ってくるから」
「おお、行ってらっしゃい」
お父さんは休みの日になると必ずお酒を飲むから、家の中では酒臭かったりする。でも、いつも朝早くから出て仕事を頑張ってくれてるから、文句なんか言えないし、そもそも無いに等しい。
「…夢は、悪くない」


バスを降りて、数分歩いた場所が待ち合わせ場所。目印は—
「お花の咲く場所が、待ち合わせ」
バスに乗った時から思ってたけど、周りの視線が痛い。いろんな人から見られてばかり…私、そんな変な格好かなあ?
「おねえちゃんキレー!」
「えっ?」
「おにんぎょうさんみたい!」
「こら、勝手に行かないの…すみません、急に」
「い、いえ」
私の不安は外れたらしい。小さい子とはいえ、褒められるのはやっぱり嬉しい。
いや、でも調子には乗れないなあ。
「…優奈?」
「?」
「優奈だ、やっぱり。おはよう」
「お、おはよう」
ロンの私服姿を見るのは初めてじゃない。去年の文化祭で、劇の衣装に自分の服を持ってきてたのを見た。その時も思ってたけど、男の子ってやっぱりカッコいい服をいっぱい持ってるんだなって。
…あれ、ロンの目の色って、紺色だっけ。カラコンかな。
「…かわいい、な」
「そう?みんなに色々手伝ってもらったけど」
「それでも、似合ってるよ」
「えへへ…」
「行こう」
褒めてもらうと、やっぱり嬉しい。久しぶりだから、余計にそうなのかな。
「まあ、お似合いね〜」
「美男美女ってヤツだな」
「青春だわ…」
「あんな可愛い子、見たことねえ…」
…これは、かなり歩きにくい。恥ずかしいというか、なんというか。
「なんか、痒いね」
「…手、握って」
「?うん」
「もっとこっち」
「こ、これ…」
カップルがやる歩き方じゃない、これ!?大丈夫なのかなあ…。腕と腕くっついてるし、すごく恥ずかしいし。
「強引、かな。わりい」
「え?」
「なんでもない。行こう」
…変なの。
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