涙の涸れる日
 紗耶は自分が学内でも男達の視線を集める存在だという自覚は全くないようだった。

 ミスキャンパスに出て欲しいと学祭の執行委員たちから頼まれても

「私なんかじゃなくて他に相応しい綺麗な人がたくさん居ますよ」
と毎年断っていた。

 僕は紗耶らしいと一人で納得していた。
 

 試験前になると紗耶と二人で図書館で勉強する。
 というより紗耶に英語を教える。
 まあ、教える事で僕自身の勉強にもなるし、紗耶と二人で居る時間は楽しかった。

 そこに桜子が入って三人で勉強する事もあった。

 正直、周りの男達の視線は怖かったが……。
 
 桜子は美人だし、紗耶は可愛い。
 タイプはまるで違うけれども英文学科の高嶺の花と噂されている二人と一緒に居る訳だから……。

 まあ本人たちはまるで無自覚だったけれども……。

 僕にも大学の男友達も居る。高校からの友人だったり、入学してから話すようになった友達も。

 でも大抵は、紗耶や桜子を紹介して欲しいと言われる。それが面倒だった。
 気になるなら自分で告白しろといつも答えていた。

 中にはチャレンジする奴らも居たが、見事に玉砕していた。

 内心ホッとしていたのは誰にも話していない。



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